ヨハネス・ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番ロ長調作品8

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諸田写真.JPG

ピアノ:諸田由里子

9月13日(土)開催の第21回「ながのアスペン音楽祭」(於長野市飯綱高原ホテルアルカディア・音楽堂)の演奏曲目のうち「ヨハネス・ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番ロ長調作品8」のを成田麗奈氏に解説していただきました。

[アスペン音楽祭]コンサートチケットのお求めは、美鈴楽器・ヒオキ楽器・平安堂・長野MIDORI・ながの東急又はケンインターナショナルfax026-223-2324・090-3142-4820へどうぞ!!

●コンサート券¥2,000(当日¥2,500)●ランチ付コンサート券¥4,000

===ヨハネス・ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番ロ長調作品8===

《ピアノ三重奏曲第1番》作品8は、ブラームス(1833-1897)にとって特殊な意味合いを持つ作品である。潔癖で自己に厳しいブラームスは、若書きの未熟な作品の一切を破棄し、また過去の作品に手を加えることは殆ど無かった。だが、ブラームスは1854年に作曲された《ピアノ三重奏曲》作品8を、四半世紀以上も経た1890年に改訂しており、これは極めて稀有なケースといえるのである。1853年、ブラームスは演奏旅行の途につき、その途上でデュッセルドルフを訪れシューマン夫妻の門戸を叩いた。夫妻はこの若き才能ある青年を熱烈な歓迎を以って迎え、実の家族のように受け入れた。ブラームスのピアノの腕前と作品に心酔したシューマンは、自身が創刊に携わった批評誌でドイツ音楽の「新しい道」を築く者としてブラームスを大絶賛した。このことは大きな反響を呼び、過大なる期待にブラームスが並々ならぬプレッシャーを感じたことは言うまでもないが、こののち彼は周囲の期待以上の情熱と信念を以って、大作曲家ベートーヴェンに匹敵するほどの重厚な作品群を輩出してゆくのである。

1854年に《ピアノ三重奏曲第1番》が作曲された頃は、ブラームスにとって最も心安らかな環境で作曲に取り組めた束の間の時期だった。しかし、この作品が完成してまもなくのうちに、師であり友人であり家族のように慕っていたシューマンが精神の病に倒れ、ブラームスはこの上ない苦悩を抱えることになる。シューマンの病状への心配は言うまでもなく、それを支える妻クララへの心配と、抑えきれないほどの熱烈な愛情が彼を苦悶させた。1856年、シューマンは死の途につき、愛するクララとの間に、障害はなくなったかのように思われた。しかしブラームスは、かつてシューマンが予言したように、芸術家として「新たな道」を切り開いてゆくため、クララへの愛をあくまでも友情の範囲にとどめ、孤独で厳格に己の道を進むことを選んだ。

それから四半世紀のうちに、ブラームスは熟達した作曲家としての地位を獲得し、独自の音楽性を構築していた。1890年、若き日の作品《ピアノ三重奏曲第1番》を再出版する必要性が生じたとき、ブラームスはかつての作品に手を加えることを禁じえなかった。彼は友人宛の手紙に「それに鬘(かつら)をあたえたのではなく、少しばかり櫛をあてて髪を揃えただけ」と控えめに書いているが、実際のところは抜本的な改作となっている。彼は溢れ出る旋律がほとばしるままに書きとめられた豊かな作品を、熟達した辣腕をふるって一切の無駄が削ぎ落とされた、厳格な作品へと構築しなおした。多すぎる旋律や、他の作曲家のフレーズに似ていると揶揄されたものは一切排除し、辻褄の合わない形式は削除し、新たに書き加えた。とはいえ、若き日に生み出された魅力ある旋律は、その後それらを凌ぐものがないほど輝くもので、ブラームスはそれらの旋律を生かすことも忘れてはいない。その結果、この作品は若き日のブラームスと熟練したブラームスとが手を携えあった共作とでも呼ぶべきものとなっている。作品は全4楽章から成っている。第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」はソナタ形式で、若き日のブラームスを最も髣髴とさせる、疾走するようなみずみずしい主題が印象的。このあふれ出す魅力をたたえた主題に対して、熟年の腕による厳格で鋭い対旋律の数々が疼くように競合してゆき、あたかも交響曲のような決然とした世界観を構築してゆく。第2楽章「スケルツォ」は三部形式で、厳しく内省的な舞曲風の主題と、中間部の優美で温かな旋律との対比が際立つ。第3楽章「アダージョ」は三部形式で、荘厳なピアノの和音にはじまり、ヴァイオリンとチェロが加わり瞑想的な対話を重ねながら静謐な雰囲気を醸し出す。中間部のチェロによる叙情的な旋律が美しい。第4楽章「アレグロ」はロンド形式で、たたみかけるような転調やパッセージによって、落ち着くところを知らぬほどの激動感を演出してゆく。

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このページは、kenが2008年8月30日 08:28に書いたブログ記事です。

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